空前絶後の読(毒)書家、店長が厳選した名作100選を紹介するコラムです。

それゆえ、世間の評価と見解が多少なりとも異なります。内外の名作を随意に選定しました。

みなさんの読書(毒書?)生活の参考になれば幸いです。1部は「おススメ読書日記」と被っています。

タダで読める「青空文庫」にリンクしています。⇒http://www.aozora.gr.jp/

鮮烈のデビュー作---湊かなえ「告白」

事件当時の関係者のモノローグで形成される秀逸な推理小説。巧みに張られた伏線は、発表時に「新人らしからぬ大型新人」と賞賛を浴びた。卒業式のホームルームで教師は衝撃の告白をする。「愛美は事故で死んだのではありません---このクラスの生徒に殺されたのです」愛美は、この教師の娘である。校内で事故死だとされていたが、教師は執念で本当の死因を突き止める。本作は、中島哲也が映画化する。主演の松たか子の鬼気迫る熱演が話題になった。

極限心理を学ぶ---従軍経験をもとに書かれた傑作小説

英国人のノーベル賞作家「ゴールディング」の傑作が1954年に発表された「蠅の王」である。極限状態に置かれた人間の心の闇を描いた傑作小説だ。飛行機墜落事故によって無人島に漂着した少年たち。やがて二つのグループに分かれて対立する。片方のグループが狂暴化し、次々と事件が起きてしまう。これらは、戦時下の兵士たちが精神を麻痺させて虐殺を行うことに似ている。現代のよく似た事例に、かつて連合赤軍が起こした「山岳ベースリンチ殺害」が想起される。

吉村昭作「零式戦闘機」---堀越二郎技師を中心にした驚異の「ゼロ戦」開発物語

乗務員の安全性には疑問があったものの当時世界最高の戦闘機の完成であった。その苦闘の開発計画は、当然海軍のたっての要請で三菱名古屋製作所で実行に移される。戦後の日本産業の発展は、このような軍事技術が備わっていたからでもある。当初、米軍ではゼロ戦と遭遇したらすぐに逃げるようにと指示していたぐらいに世界最強を誇っていた。それが、最後には、満足に着陸もできない若い航空兵に「特攻機」として使用されたのだ。

犯罪者になれなかった心優しい著者---「苦役列車」

芥川賞を受賞した私小説である。著者の自伝的要素が強すぎて、「こんな世界があったのか---」と読者を呆然とさせるかも知れない。2012年に映画化されている。主演には「森山未來」が起用された。父親が強姦事件で逮捕されて両親は離婚。著者は高校進学を経済的事情から断念していた。そして肉体労働による「その日暮らし」、ある日一人の「専門学校生」と出会う。そして、彼とは異なる「当たり前」の日々を暮らす「当たり前に生きる人」の存在を思い知る。次第に自虐的、暴力的になる主人公であった---「生きる」とは「苦役列車」に乗るようなことなのだろうか。この2011年発表の小説「苦役列車」(西村賢太著)をおススメします。

日中戦争をテーマにした「反戦」小説---五味川純平著「人間の条件」

全部で1,300万部を売り上げた歴史的大作である。全6巻という大作で、読破するのも大変であるが、「いい小説を読んだ」といった満足感を得られる。「戦争」に心ならずも加担してしまう満州鉄道職員の「梶」。日中戦争に反対する主人公は、だが、自分の意に反して戦争にかり出される。作品は、「仲代達也」主演で映画化された。DVDで視聴できるので、若い人こそ観て欲しい。1959年に初公開されるや「反戦映画」の傑作と賞賛された。

日本の「大衆小説」の先駆けになった---「大菩薩峠」

1931年に「中里介山」によって新聞に長期に渡って連載された。幕末を舞台にした孤高の「剣士」の話である。当時、谷崎潤一郎、芥川龍之介、菊池寛に賞賛されたらしい。作者本人は、これを「大乗小説」と呼び、仏教思想にのっといて「人の業」を描き出そうとしたようだ。これを読むと最近の「娯楽小説」はすべて「陳腐」なものに思えてくる。

ベートーベンをモデルにした音楽家の人生を描いた壮大な伝記小説「ジャン・クリストフ」

作者の「ロマン・ロラン」は、本作でのフランス批判でフランス人を敵に回し、25年もの間祖国に帰れなかった。この作品こそ「大河小説」と呼ぶに相応しい。神童と云われた「ジャン・クリストフ」はパリで音楽の修業のためにパリに出る。だが、憧れていた「パリ」の街はそこには無かった。彼は失望した。後に暴動に巻き込まれ、はからずも警官をはずみで殺してしまう。彼の波乱万丈はさらに続くのである。一度、読んで欲しい。苦労して読了する値打ちがある。

名作を数多く発表---松本清張の「砂の器」

どれを読んでも優れた作品ばかりで驚くのだが、店長は、この「砂の器」を推したい。映画では、丹波哲郎、森田健作が刑事に扮した。幼いころ、父親は「ハンセン病」とされ村を追われた。その父と行動を供にした主人公の少年。そして一人の駐在所のお巡りさんに保護されるも逃亡してしまう。やがて、少年は名指揮者として成功する。彼は過去を封印していたが、偶然そのお巡りさんは、1枚のポスターを見つける。それが成人して指揮者となった、あのとき保護して面倒をみた少年であった---映画では、病気の父親と村を追われて放浪する父子の映像が胸を打つ。映画が原作を超えることもあるのか、と感心したのを覚えている。

徳永直によるプロレタリア文学の傑作---「太陽のない街」

「蟹工船」と並び、労働者の逃げ場のない苦悩を描いて傑作とされる。1926年に実際に起きた労働争議をもとに描かれる長編である。作者自身がその争議の渦中にあっただけに、ち密で迫力ある筆致で描かれている。それにしても、労働者たちには、陽が当たる道を歩くことは許されないのであろうか。世界の歴史の中で、最も「社会主義」の成功を見たとされる日本経済ではあった。考えさせる小説である。

発狂されるほどに女性に好かれてみたい---意外にモテた森鴎外

小説のモデルは自分、1890年に発表された「舞姫」という傑作である。ドイツ留学中の「太田豊太郎」が恋に堕ちる。相手は「エリス」という美人である。だが、この豊太郎、「エリス」を捨てて日本に帰国してしまう。このとき「エリス」は身ごもっていた。そして失意のあまり精神が錯乱する。主人公が「森鴎外」当人であることが知れると、世間は一斉に非難の矛先をむけたのである。実際に1888年に「エリーゼ」という女性が「森鴎外」を追って来日しているのだ。うらやましい。

広島で被爆した作家---美しい散文に心が打たれる「原民喜」の作品群

その被ばく体験を美しい散文で表現したのが代表作「夏の花」である。無残に焼けただれ、折重なる夥しい犠牲者たち。その悲惨な状況を世にも美しい散文で描写している。戦後世代こそ一度は読んで欲しい。ここまで美しい文章で表現されると、被ばくした広島を「ヒロシマ」とカナ表記した理由が納得できる気がする。作品には、そのほか「いのちの初夜」がある。こちらも美しい散文である。彼は1951年(昭和26年)3月13日に中央線吉祥寺付近で自殺している。享年46歳であった。

現在の10代日本人の話?---ではない。1906年にドイツで発表

ノーベル文学賞作家ヘルマンヘッセ作「車輪の下」

「社会の目に押しつぶされる青年の苦悩」を描いた作品。神童とも云われた作者の自伝的小説である。タイトルの「車輪の下」とは、生徒だった神学校の校長先生の説教である。「へこたれると、車輪に踏みつぶされるぞ」という意味である。本人は秀才であったが、神学校の厳しい規律に馴染めず、次第に意欲を失っていく。15歳であった。神学校を逃げ出し自殺未遂を起こしたヘルマン・ヘッセが、自己に決別するために書き上げた名作である。

菊池寛作「恩讐の彼方に」

大正期文学の最高傑作である。菊池寛は、魅力ある短編小説を多く発表している。なかでも傑作の呼び声が高いのが本作である。ただし、店長は「俊寛」の方が面白いと思っている。菊池寛が始めた同人誌が、現在総合出版社として揺るぎない地位を占める「文芸春秋社」である。菊池寛は、想像さえできなかったに違いない。

シリーズ最高傑作---東野圭吾作「麒麟の翼」

刑事・加賀恭一郎を主人公にしたミステリー。シリーズ9作目にして東野圭吾は最高傑作を生み出した。事件は単純に見えたが、「死にざま」には不可解さがあった。そして加賀刑事の丁寧な捜査によって、事件にまつわる真実がひとつずつ紐解かれていく。やがて浮かび上がる「家族の闇」。小説の苦手な方は、阿部寛主演の-「麒麟の翼~劇場版・新参者」を観るとよいだろう。小説とはまた違った感動を味わうことができる。

名作100選に入れるかどうか迷ったのだが、湊かなえ作「夜行観覧車」

高級住宅地で暮らす一家を襲った殺人事件。父親が母親を殺すという衝撃的なミステリーである。作者「湊かなえ」は店長と同じ広島県出身だ。そんなこともあって店長は作者のファンになった。「新人らしからぬ」と絶賛された前作の「告白」をしのぐほどの圧倒的な筆力である。ぜひ読んでもらいたい。

なお、「告白」で女性教師を演じた「松たか子」は、その鬼気迫る芝居で話題になった。

評価されなかった童話「注文の多い料理店」

出版当時では、ほとんど評判にならなかったという「宮沢賢治」の童話である。当時は、自費出版でもあったがそのほとんどは売れ残った。世の中が彼に付いていけなかったらしい。マスメディアが未発達という側面も大きかったのだが、脚光を浴びたのは残念ながら宮沢賢治の死後であった。この童話は、客の二人が西洋料理店に食事に出かけ、店に調理されるという怪奇的な説話である。食べられる側になったときの恐怖が、読む人に畳みかけて来る。他の童話とともに文庫化されている。

心理学の金字塔V・Eフランクル著「それでも人生にイエスと言う」

著者には、この他に有名な作品の「夜と霧」がある。アウシュビッツ収容所から奇跡的な生還を果たし、その体験がのちに名著として結実したのである。過酷な収容所で、いったい何が生死を分けることになったのか。なにゆえフランクルは生還できたのか。おぞましいエピソードが語られる。一度は読んでみてください。例えば、このようなエピソードが語られる。ある収容されていたユダヤ人が「神のお告げを聞いた」という。「この地獄から解放される日を告げられた」そして、その日がやってきた。だが戦争はまだ続いたのだ。そのユダヤ人は解放された。それも「腸チフス」の発症によって---不可解な人間理解のためにも、読めばあなたも力強くこの日常を生きることが出来る。

成功哲学の名著オグ・マンディーノ著「十二番目の天使」

これは読み易く、夢中になってすぐ読了するだろう。人生に生き詰まってどうにもならなくなっていた主人公。自殺の直前、友人が訪問してくれたせいで思い留まった。そして少年野球のコーチを引き受けることになる。やがて彼は、一人の少年との出会いによって、再び生きる意味を考えるようになる。読み進んでいくと何故か「涙」が出てくるのだ、これが。そして、主人公と同じように「人生の意義」を知る。

高木俊朗作「特攻基地知覧」

薩摩半島の知覧飛行場は、太平洋戦争の「狂気の舞台」であった。作者は、この「特攻」をあからさまにすべく入念かつ緻密な取材を行い、語られることの無かった歴史を暴いてみせた。悲劇的なエピソードが、これでもかとばかりに語りつくされる。日本人を考えてみる、そのキッカケにもなる1冊である。

司馬遼太郎作「坂の上の雲」

日露戦争の時代を扱った大作である。四国松山の3人の勇壮な男たちを活写した。秋山兄弟と親友正岡子規である。日本海大海戦の描写は迫力満点。すぐそばで展開しているような臨場感があった。店長は、この小説を感心しながら読み進んだ。明治期の日本である。よくぞロシアと戦って勝利してくれたものである。その後の日本を考えてみるきっかけになるだろう。文庫で8巻まである。けっこうな量である。だが読後は清々しさが心に広がってくれる。

NHK大河ドラマで、香川照之がこの正岡子規を熱演していた。「野球」という名称は、正岡子規が名付けたものだという。大作だが、1度トライしてみるとよいだろう。

信仰の根源的な問題を衝いた野心作、遠藤周作の「沈黙」

西洋と日本の思想的断絶をあぶりだそうとした意欲的な力作である。緊迫感と力感が読者に迫ってくる。信仰の話は日本人には苦手だ。

それは、日本人は「神」と葛藤するほどの基礎的な習慣がないからである。

それに、身の回りに「神」はどこにでも宿っていて、普段に意識することなく暮らしが成立している。この小説も、ただの文学作品として楽しめばよいと思う。

映画化され絶賛、野坂昭如作「火垂るの墓」

この異様な文体に圧倒されファンになった。文章が終わりそうで終わらない。自ら「焼跡・闇市派」を称し、昭和の文壇のみならず「芸能界」にまで手を広げた。「マリリン・モンロー、ノーリターン」のヒットで知られる異色歌手でもあった。さらに50歳を超えてラグビーを始めて倶楽部まで組織していた。その全盛時に会員は100名を超えたという。店長が、面白かったのは、「エロ事師たち」であるが、文学作品としては「火垂るの墓」を推したい。

大江健三郎作「青年の汚名」

まだ新進作家時代の意欲作である。店長は、学生時代には愛読した作家のひとりであった。だが、その後は大江の「反日」的な言動が気になって読者を辞めてしまった。その反動か、店長は三島作品の方に興味が転向してしまった。で、この作品であるが、ニシン漁で賑わう北海道の漁村が舞台である。青年は無実の罪を被せられる。つまり冤罪である。詳細は忘れてしまったが、当時は満足いく読後感であった。この作品もはずすことはできない。大江健三郎全集に収められている。

三島由紀夫作「青の時代」

店長は、三島作品の中ではこれが最高に面白い小説であった。三島本人は「失敗作」と述べている。これは昭和の実際におきた金融犯罪「光クラブ事件」をモデルにしている。東大生の「山崎光嗣」は、「光クラブ」という高利貸しを始めた。経営者は、現役の東大生ということで大衆の人気を呼び、彼の業容は急拡大していった。だが、やがて警察に逮捕されるにいたって、客足が遠のき、見る間に資金繰りに窮してしまう。起訴は免れたが、世間の信用は失墜してしまった。「山崎」は死を選んだのである。青酸カリを服毒した。「青酸カリで清算す」という遺書を遺していた。その時、彼の事務所の金庫は空になっていたという。

SF界の巨匠アーサー・クラークの傑作「幼年期の終わり」

後に続く作家たちは、この作品を読んで「これ以外のどのようなSFも陳腐なものになってしまう」とこぞって嘆息したという。それほど素晴らしい情景描写である。

人類が進化を遂げ、人類以外の別のひとつの生命体に溶けあっていく。その圧巻な描写の前では、どんな作家でも無力になる。文庫で読むことができる。歴史小説も良いが、たまにはSFも良い。しばし現実を忘れさせてくれる。店長は、この1冊はどうしてもはずすことができなかった。ぜひ、読んで下さい。

帝国海軍を育てた山本権兵衛を描いた「海は蘇える」

江藤淳の作品、文春文庫に全5巻入っている。司馬遼太郎の「坂の上の雲」も大作であるが、この小説も読みごたえがある。「よくぞ書いてくれた」と読み終えて店長はため息をついたものだ。帝国海軍が解体されて久しいが、その「あり方」は果たして正しかったのだろうか。お隣の「中国」の膨張は止められない。このあたりで今一度考えてみたい。「防衛」についてを。

杉森久英の作品「天才と狂人の間」

大正期に異彩を放った流行作家の「島田清次郎」の伝記小説である。角川文庫で入手できるはず。大正8年、「地上」と題された作品がベストセラーになった。作者は「島田清次郎」いまだ20歳の青年であった。かれはやがて精神を病んでしまった。その悲劇的な生涯を石川県の同郷であった杉森久英が描いている。精神を病む人は現在でも一定数いる。ほとんどは隔離されている。「天才」と「狂人」の間なんてふすま1枚の差もないかもしれない。これは店長が大学を卒業した年に読んだ。

禅が教える開運への道「開運論」

禅と深層心理学の出会いが本書を生み出した。心身の脱力とプラス思考が人生に革命をもたらす。バイタリティーあふれる解説が続く。

元気が出る1節がある。「北条早雲」だ。60歳で小田原に攻め込み、かの地を切り取り87歳にして波乱の人生を閉じている。だがこの早雲、中年になるまでどこで何をやっていたか定かではない。社会では60歳定年が多い。「もう年かな---」という人が多すぎる。「定年」とはリタイヤではない。「一定の年」に過ぎないのだ。それまでは予行演習に過ぎないのである。店長は「北条早雲」に学ぶ!

西口克己の傑作「道成寺」

みなさんは、「安珍・清姫」伝説を知っているだろうか。悲恋の末に清姫は、大蛇に化けて安珍を殺すという説話である。その説話の、唯物論的解釈された小説を、氏は類まれな筆致で再現した。名作にして力作である。平安京の時代が活写される。文庫化されているのかどうか店長は知らない。京都には愛読者のサークルがあり、ネットで西口克己の小説を購入できる。なお、現在、これは絶版である。

成功心理学の古典「心の力の秘密」

日本教文社から再販されている名著である。「ザ・シークレット」などの「引き寄せの法則」が陳腐な代物に思えてくるほどの説得力がある。「心の持ち方」こそ人を幸せにするし、また成功ももたらすという。店長の20年来の愛読書でもある。みなさんにもおススメしたい。娯楽小説を読むのは悪くない。悪くないが、成功に特化した心理学関係書も読んでみたいものだ。現状に不満や不安を抱えて生きるのでは、限りある人生が無駄になる。

ドストエフスキーの代表作「罪と罰」

店長一押しです。昨今の「オレオレ詐欺」を見聞するたびにこの物語を思い出します。主人公の「ラスコリーニコフ」は貧乏学生です。彼は、1つの悪行は100個の善行によって贖うことが出来る、という偏った思想の持主。彼は、近所で「金貸し」をやっている老婆を殺害し金銭を奪います。老婆は「社会」にとっての「害毒」であり、彼女の貯め込んだ金銭を自分こそが手にする権利がある。そのお金で高等教育を受ければ、社会にとって「役に立つ」ことである。それこそ「善行」であると思い込む。だから老婆を襲うことは「社会」にとって有益なことであると結論し実行する。ところが殺害後に、彼はこの事件を起こしたことを後悔するのだ。苦悩する彼を救ったのは、彼が「唾棄すべき人」であった、美しい心の持ち主の「娼婦ソーニャ」である。彼女のおかげで「まっとうな心」を取り戻した主人公「ラスコリーニコフ」は、やがて自首を決意する

格差拡大で脚光を浴びた「蟹工船」

作者の小林多喜二は、新聞記者時代に、この過酷な労働者を知る。その現実を世間に知ってもらいたい、そう思って筆を執った。1929年であった。世界大恐慌が起きた年である。「蟹工船」は、船舶でも工場でもなく、そのどちらの法規制も受けない海上の工場である。そこで働く労働者は、まるで奴隷のように従事していたのだ。犠牲者も出ていた。結局、資本主義を進める国家を敵に回すことになった。やがて官憲によって逮捕、激しい暴行を受けて死亡した。当時は病死と発表されていた。

昨年、非正規雇用は4割を超えたらしい。収入格差は静かに拡大している。もう一度、世の中を斜めから見てみよう。何かが分かるはずである。

辻邦生作の信長、「安土往還記」

宣教師とともに来日したジェノヴァ生まれの船員の目で安土時代の織田信長を活写した作品である。

店長が、学生時代に読んでその筆致に感動、繰り返して読んだ歴史小説である。構成が素晴らしく、ストイックな文体も素晴らしい。これを読んで「小説家」なんて自分には、とても無理だと激しく思ったのを覚えている。これは、新潮文庫に収めてあるのでぜひ読んでもらいたい。驚かれるだろう。